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七草文庫

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懐かしい物

「中学高校で6年間小説を書いていたなぁ」とつい懐かしくなり、久しぶりに小説のサイトを開いてみました。
進学や卒業を繰り返し、なかなか物を書く機会が無いのですが…
これを機にまたぼちぼち書いていけたらいいなと思っております。

最初なので、PCを漁っていたら出てきた物をいくつかアップしておきました。

これは中学か高校の頃、部誌に寄稿したものです。懐かしいw

PCの中で腐らせるのもなんだかなぁと思ったので…皆様に読んでいただけると嬉しいです。

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作家

 売れない作家が居た。彼は一人だった。家族も、友人も、恋人も居ない。薄暗いアパートの一室で毎日筆を動かしていた。

 ある日を境に彼の本が売れるようになった。

 

 とても心を動かされる作品だ!彼の書く文章は素晴らしい!百年に一人の逸材だ!是非わが社から出版を!是非映画化を!是非、是非・・・

 

 彼は喜んだ。自分の才能がついに認められた、と。しかし幸せはそう簡単には掴めなかった。多くの取材が彼に詰め寄り、連載の話も何十社という出版社から持ちかけられた。映画の脚本、ラジオ出演、CMのキャッチコピー・・・彼は次第に精神を蝕まれていった。

 

 そんな時だった。彼女とであったのは。

 

 夜、彼女はいつも迎えにきてくれた。美しい月の夜。彼は彼女と夜の野原を散歩した。彼女は笑う。

 

 疲れているのね。無理をしないで。私がそばにいるから大丈夫。あなたはもう、がんばらなくていいの。

 

 彼は頷いた。

 

 もうがんばるのはやめよう。君が居てくれるなら僕はそれでいい。此処でずっと待っている。君には夜にしか会えないから。この野原で君をずっと・・・

 

 病院の一室で、作家は一人眠っていた。もう目を覚まさないかもしれない、と医者は言った。病気であるわけでもない。彼は急に目を覚まさなくなった。

 

 誰も居ない病室。看護婦が慌てて彼の姿を探す。しかし彼は何処にもいなかった。心地よい風が、秋の訪れを告げた。

                       終

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終電

売れない作家が居た。彼は一人だった。家族も、友人も、恋人も居ない。薄暗いアパートの一室で毎日筆を動かしていた。

 ある日を境に彼の本が売れるようになった。

 

 とても心を動かされる作品だ!彼の書く文章は素晴らしい!百年に一人の逸材だ!是非わが社から出版を!是非映画化を!是非、是非・・・

 

 彼は喜んだ。自分の才能がついに認められた、と。しかし幸せはそう簡単には掴めなかった。多くの取材が彼に詰め寄り、連載の話も何十社という出版社から持ちかけられた。映画の脚本、ラジオ出演、CMのキャッチコピー・・・彼は次第に精神を蝕まれていった。

 

 そんな時だった。彼女とであったのは。

 

 夜、彼女はいつも迎えにきてくれた。美しい月の夜。彼は彼女と夜の野原を散歩した。彼女は笑う。

 

 疲れているのね。無理をしないで。私がそばにいるから大丈夫。あなたはもう、がんばらなくていいの。

 

 彼は頷いた。

 

 もうがんばるのはやめよう。君が居てくれるなら僕はそれでいい。此処でずっと待っている。君には夜にしか会えないから。この野原で君をずっと・・・

 

 病院の一室で、作家は一人眠っていた。もう目を覚まさないかもしれない、と医者は言った。病気であるわけでもない。彼は急に目を覚まさなくなった。

 

 誰も居ない病室。看護婦が慌てて彼の姿を探す。しかし彼は何処にもいなかった。心地よい風が、秋の訪れを告げた。

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